ジグザグサンバ

グリフォンさんのエントリで連想したのがあったので書いておこうかなと。ローゼン閣下のお話。
　

アラブが見た十字軍 (ちくま学芸文庫)

最近、仕事の合間に読んでるんだけど面白えのよ。ポール・バーホーベンが十字軍で撮りたいというのも納得。たとえばあるアルメニア人の町で、町のあるじトロスが十字軍の部将ボードワンと交渉の末、ボードワンを後継者とすることを余儀なくされる一幕。

ボードワンは一介の傭兵となるのを拒み、トロスの正当な後継者に指名せよと迫る。高齢で、子がなかったから、彼は引き受けた。養子縁組の公けの儀式がアルメニアのしきたりどおりに行われる。
　トロスは白いだぶだぶの長衣を着込んでいる。ボードワンは、上半身裸で、「父親」の衣服の下にすべり込み、身体を相手の身体にこすりつける。次は「母親」つまりトロスの妻の番で、彼女に対し、ボードワンは今度も、衆人の面白げな環視のもとで、長衣と素肌のあいだにすべり込む。この儀式は子どもの養子縁組のために考えられたのだから、「息子」が毛むくじゃらで大男の騎士と来ては何だか場ちがいだと、列席者はひそひそ話し合ったものである。
　こう語られた場面を想像して、ムスリム軍の兵士たちは腹を抱えて笑った。しかし、その話の続きは、彼らを震え上がらせる。儀式の数日後、「父と母」は「息子」の煽動による群衆のリンチを受け、「息子」は２人が殺されて行くのを平然と見守っていた。その後、彼はエデッサの「伯爵」を宣言し、フランクの同僚を軍事と行政上のあらゆる重要な地位につけた。

このブラックユーモアに充ち満ちた場面。バーホーベンお得意の残酷なニヤニヤ笑いを浮かべる群衆の姿が浮かびます。十字軍の獣性（まあ書いてるのがアラブ方なだけに一面的に過ぎるきらいもあるが）とムスリム諸侯のカニバケツぶり。カルマたっぷり渦巻き過ぎるよアラブは。
　
話がいきなり旋回したが、id:gryphonさんので何で思い出したかというと、諸事情あって何回か聞いてるのよ、麻生太郎講演会。政治家ってな演説や講演にも持ちネタがあって、近い時期に聴くと「またこれかよ」と思うことも多々あるわけですな。
　
そいで大久保利通の玄孫の持ちネタは（俺が聴いた当時は）「キャプテン・マージド」。ジダンも憧れていた「キャプテン翼」が、どれだけ外国で受け入れられているか（ひいてはどれだけ日本のソフトが世界で人気あるか）というお話DEATH。さらには日本の自衛隊がイラクはサマーワで無事活動を終えたのも、「俺がキャプテン・マージドを給水車に描けと言ったからだ」と。このインタビューでも言ってるね。

「クールジャパン」を狙うハリウッド（2）
〜ローゼン閣下こと麻生太郎、中国脅威論を一蹴
「あの国から面白いコミックが出てくるとは思わない」
　
麻生　そう。日本の自衛隊が復興支援していたイラクのムサンナー県というところでは、タンクに「キャプテン翼」の大きなステッカーを張った給水車が走ってますよ。日本のODAで提供した車です。

　最初は「タンクに大きく日の丸を描く」というから、僕はこう言った。「君たち、ぱっと見てイラクとイランの国旗の区別がつくか」と。それでイラクの人たちが知っている日本のものは何か、と聞いたら「キャプテン・マージド」だと言う。「キャプテン翼」をあちらではこう呼んで、大人気なんですね。じゃあそれで行けと。

キャプテン翼 1 (集英社文庫(コミック版))

外務省のサイトにも乗ってる。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/iraq/renraku_j_0412a.html
在サマーワ連絡事務所より

サマーワ「キャプテン翼」大作戦
−給水車が配る夢と希望−
その1

平成16年12月
在サマーワ外務省事務所
江端康行
　
「殺風景な町だなぁ」
　
　これが初めてサマーワ市を訪れた時の印象でした
（中略）
ここで復興支援のお手伝いをするのなら、その中で何か日本とサマーワの架け橋となるようなことをしてみたいと思っていました。非常に漠然とではありますが、折角やるのなら何か楽しいこと、面白いこと、そして、血が通った活動ができないだろうかと考えていました
（中略）
最後に出会ったのが、「キャプテン・マージド」です。イラク人スタッフと雑談していた時でした。いつものようにサッカーの話で盛り上がっていると、アラブのキャプテン・マージドが話題になりました。よくよく聞いてみると、それは何と日本の「キャプテン翼」のことではありませんか。しかも、イラク人の大多数は翼君が日本人であることを知らない！アラブのマージド君だと思っている！これには驚きました。その瞬間、私の頭の中で4つの点が一つの線で繋がりました。
　「給水車に子供の憧れるサッカー選手「キャプテン翼」を乗せたらどうだ？」

　
あれ？