今日読み終わった本

世界史の誕生─モンゴルの発展と伝統 (ちくま文庫)

世界史の誕生─モンゴルの発展と伝統 (ちくま文庫)

根本的な歴史観の異なる東洋史(中国史)と西洋史を並べ立てた所謂「世界史」でなく、双方を覆ったモンゴル帝国以降を「世界史」の始まりとしたらどうだんべという本(それより前は『世界史』以前として独立に扱う)。そういやあ「自律的に発展してきた国などあり得ないのだから相関を理解しながら学ぶのが一番良いよ」と高校の世界史で習ったような気がしなくもないが、憶えてるのは重箱の隅を顕微鏡で覗くような明大法学部の過去問出しっこしてたくらいなんだよな。
内容は本筋以外にも、天下を統一したわけでもない東夷の「夏」、北狄の「殷」、西戎の「周」が「史記」の本紀に並ぶのは、「正統」(中国世界の統治権)の概念ゆえであり、それは台湾問題などで今も中国を縛っている、とか、600年にわたる遊牧民出身の王朝から漸く脱した途端、キタイに対して劣勢に立たざるを得なかった「中国人」が「武力では劣っても文化では『夷狄』に優っている」として生み出した(誤った)思想が中華思想である、とか、中国は元朝清朝の時代に中国の一部だったからとチベットの領有権を主張しているが、どっちも「中国を支配した王朝ではあるが、中国の王朝ではない」し、それなら今のモンゴルも中国の領有権を主張出来る、とか色々興味深い。けどこの人が後に「この厄介な国、中国」を書くに至るというのも頷けるというかなんというか……批判は(この本みたいに)混ぜとく程度にした方が効き目あるんとちがいますかねえ。
ちょうど書いている時目に入ったのでツッこんでおくと、東夷、北狄西戎、南蛮は(中国にとっての)中国外の地域への蔑称だったのが、侮蔑の意味合いを薄めつつ日本に伝わったわけであって、オランダ人が南から来た野蛮人だから南蛮人という論をそのまま引くのは色々誤解を招きそうなのでお薦め出来ない。本人は実感として書いているとはいえちょっと。

この厄介な国、中国 (ワック文庫)

この厄介な国、中国 (ワック文庫)

一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)

一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)

マスコミ対応緊急マニュアル―広報活動のプロフェッショナル

マスコミ対応緊急マニュアル―広報活動のプロフェッショナル

公式見解のまとめ方やブラックジャーナリストの見分け方なんてののほか「あまりに説明会見が短いと『会見たったの10分』などと書かれる」とか「ぶら下がりを防ぐ為に会見者の出入り口を別に」とか経験に基づくであろう内容も多く、実用書とはいえなかなか面白かった一冊。貫かれているのは報道陣を「カチンとこさせないように」「反発を招かないように」という姿勢で、これまでの苦労を想像するに頭が下がりますわ。「緊急事態に最初に駆けつけるのは新聞社の場合社会部。経済部なら企業の考え方を理解してくれる傾向があるが、社会部は容赦はない」というのは苦笑で、江角マキコ年金未納騒動のときも、「事務所側が普段の芸能マスコミ相手のつもりで会見前に牽制かけたら、来てたのがそんなんばかりで無意味もいいとこだった」って週刊誌で書かれたもんDEATH。