猿一匹、唄えば侍

 4年前、北海道で「稲葉事件」と呼ばれる大不祥事が起きました。「シャブ中の警官」「囮捜査」「警察内部の裏金」「事件の捏造」……とまあ非常にノワール的なキーワードが並ぶ事件が世間に与えた影響は大きく、それは今でも尾を引いております。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060114-00000046-kyodo-soci
「不適切な記事」とおわび 道警捜査報道で北海道新聞

 北海道新聞社(札幌市)は昨年3月に掲載した北海道警が「泳がせ捜査」に失敗し、大量の覚せい剤大麻が道内に流入した疑いがあるとの記事について「記事の書き方や見出し、裏付け要素に不十分な点があり、全体として誤った印象を与える不適切な記事と判断した」との調査結果を14日付朝刊の紙面で公表し、おわび記事を掲載した。
 道警が「事実無根で、道民の誤解を招く」として訂正と謝罪を要求、同社が社内調査していた。
 調査報告によると、覚せい剤取締法違反罪などで有罪が確定し服役中の稲葉圭昭元警部(52)が公判で明らかにした泳がせ捜査に関する証言を発端に取材を開始。複数の捜査関係者から元警部の話と矛盾しない証言が得られたことなどから、2005年3月13日付朝刊に「覚せい剤130キロ道内流入?」との見出しで記事化した。

北海道警がこの「稲葉事件」と不正経理問題で、信頼を地に落としたことは言うまでもありません。そして北海道新聞不正経理問題の追及で新聞協会賞を受賞。その後道新と道警との間で繰り広げられた冷戦はかなり凄まじい……というか厭らしいものがあったといいます。現場レベルにおいても、道警がメディアに一斉に報道発表文を流しても道新からの質問には一切答えないというやり取りも珍しくないとか違うとか。もっとも道新にも営業関係で結構隙があるため、上層部では色々寝技の攻防があるらしいですが。

北海道警察の冷たい夏 (講談社文庫)

北海道警察の冷たい夏 (講談社文庫)

稲葉事件を知るにはこちらを。
ちなみに「白竜」でも稲葉事件をモチーフにした話が登場(エピソードでもかなり近しいものが)。勿論最後にほほ笑むのは白竜なわけですが、この漫画「格闘技イベント主催者の脱税事件」をネタにしたストーリーを出してきたり中々ニヤリ。

ちなみにモーニング連載の「刑事が一匹」でも、稲葉事件をモチーフにしたと思しき「銃器対策と潜入捜査」話が始まりました。

刑事が一匹… 1(牙の女王編 起の巻) (モーニングKC)

刑事が一匹… 1(牙の女王編 起の巻) (モーニングKC)

この作品、編集の警察に対する私憤で生まれたものということが明らかになった時点でかなりアレ。いやきっかけが何であれ出来が良ければ文句は出ないのですが、私の知る警察漫画の中でもかなり最低ランクに位置する作品DEATH。もっとも、4巻にわたって描かれた警察内部の腐敗がやっと白日の下に晒されたと思ったら「その一週間後に起こった東海大地震によって、すべては吹っ飛んだ」で〆てしまうあたり(ちなみに東海大地震はそれ以外で全くストーリーに絡まない)、警察に対する勉強不足では収まらないものがあるのかもしれない……ってこの人ベテランの筈だよなあ。