はたまた昨日の続き

 ビッグコミックスペリオール13号の「漫歌エロチカ派」で、相原コージ氏が20年前の自分に対し、自らの転機をオウム事件と吐露。

……善悪に変わる新しい価値観として「面白主義」を自らの柱に据えた。すなわち、あらゆる事物を「面白いか」「面白くないか」で判断する……でもな……俺自身は、その面白主義に挫折したんだ…俺が30歳ぐらいのときに、オウム事件てのが起こってな……面白主義の立場でいえば、オウムのことは一番価値のあることとして賞賛されるべきなんだ。だって、当時あんなに面白いインパクトのあることは他になかったからな。でも、彼らが実際やったことを思えば、俺はもう心から面白がることはできなかった…というか面白がってた自分がイヤになったんだ…俺は挫折したんだ…

 以前どこでだったか「サルまんで自ら逃げ場を封じていったことで、相原氏の作品に閉塞感が漂うようになった」という指摘を読んだのですが、当事者の胸中ではこういった葛藤があったとのこと。私はビッグコミックスピリッツでの「相原コージの なにがオモロイの?」が決定的だったと思っていたのですがねえ。
 ストーリー漫画である「ムジナ」でも多様な挑戦的手法を繰り返してきた氏は、この作品では掲載作品についてのアンケートを毎週行い、その後アンケート結果に沿った内容の漫画を発表するという実験にアタック。今思えば「少年ジャンプ的アンケート至上主義のパロディ」、「マーケティングと実際の市場のズレ」といったポイントをつつけば良かったものの、真っ正直に要望に応えれば応えるほど増えていく「つまらない」のパーセンテージと痛罵、その過程で迷走していく作品、そしてコメント。それはまるで、タイトルの意味が「(どんな漫画が)オモロイの?」から「(漫画家相原コージの)どこがオモロイの?」に変容していくかのような痛々しさだったのです。
 「なにがオモロイの?」連載開始時の氏の言葉

 でも、俺すごく傷つきやすいんですよ! だから物凄い反応が来たときに、自分がどうなるのか、今は恐いけど楽しみでもある。全然ウケない!?なんてことになったら、ひょっとしたら壊れちゃうかもしれないけど、そんな俺の姿も、読者から見たらまた面白いんじゃないかと思ってます。

 笑えませんでした。