喰いタン

喰いタン(1) (イブニングKC)

喰いタン(1) (イブニングKC)

 読むとこが増える一方の「イブニング」。「軍鶏」と「餓狼伝」が一つの雑誌に入っているだけでも満腹感は増そうというものだ(2作とも雑誌が休刊になっての移籍というのは不吉だが)。そんな中でも楽しみなのは、グルメ漫画の大家となった寺沢大介の「喰いタン」です。
 料理漫画といえば、大体『料理勝負もの』と、『料理にからめた人間模様もの』の二パターン(前者では「将太の寿司」、「一本包丁満太郎」、「鉄鍋の醤」、後者だと「味いちもんめ」、「ザ・シェフ」あたりが有名どころでしょうかね)。(このデンでいくなら「美味しんぼ」は『人間模様もの』→『料理勝負もの』→『地方の名産紹介』と『過去のデッドコピー』、「こち亀」と並ぶ老醜を晒しているのを自覚してほしいものです。原作の雁屋哲もひどいが、作画の花咲アキラもここ数年、麺類を食べるのに大口を開けて流し込む描写を始めてて非常に不快)
 もちろん料理やそのアイデア自体を中心に話を回す路線もありますが、原価率や消費者心理を盛り込んだ「ラーメン発見伝」や、単なる文明批判に見えなくもない「おせん」みたいな+αをつけるか、「OH!MYコンブ」みたいなトンデモ路線で行くかしないと面白みに欠けるわけで…
 そんな例外の一つがこの「喰いタン」であります。料理人が主人公じゃないという時点でこれまでと違うんだが、食べ物に関する雑学を軸に、異常に力の抜けた描写で探偵ものにからませた構成はまさに最高級の時間つぶし。「力を抜いて投げることを覚えたら投手として一流だな」と偉い人(チック君)が言っていましたが、この力の抜け具合は藤沢とおるが「湘南純愛組」から「GTO」へ移行した頃を思い出すのであります。
 なぜか同じ雑誌で「ミスター味っ子Ⅱ」も連載されているけど、すごいのは「将太の寿司」から料理漫画として退化しているところだな。ラーメンの上に餃子を乗せて、「破った中から出るスープで味が変わる!」って明らかにまずいだろ。まあだんだん落ち着いてきてしまったのは残念なんだかなんなんだか。

例外その2

 「単なるリアクション漫画に堕した」と悪評紛々の「焼きたて!!ジャぱん」について(続く)。